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[ インタビュアー ]
大塚千春先生
  英語トレーニングで授業改善を進める先生方に、APETで講師を担当する大塚千春先生がインタビューしました。

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第42回 今日失敗しても、また明日がある
      〜試行錯誤から、自分の授業が生まれる  東京都 玉川聖学院高等部 木下 恵理子先生〜
今回ご登場いただくのは、
木下恵理子(きのした・えりこ)先生です。

木下先生は、東京の私立高校で教えていらっしゃいます。
柔らかく、おっとりとした雰囲気の木下先生は、今年8年目。
 
日々の試行錯誤の様子を、語っていただきました。
木下先生のお話、きっと心に響くと思います。
 
最後まで、じっくりとお読みください。
       
(大塚) 木下先生は、先生になって何年目ですか?    
(木下) 今年で、教員になって8年目です。
失敗ばかりしているので、気持ちはまだまだ新人のままのような気もしますが…。

一生貧乏でも、言語学をほそぼそとやりながら一生を終わりたいと思っていたんです。
まるで神様に背中をトンと押されて着地した先が今の学校、というような
不思議な展開で教師になってしまいました。

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(大塚) 今教えていらっしゃる学校は、どんな学校なんでしょう?    
(木下) 中高一貫の女子のミッションスクールで、
礼拝に始まり礼拝に終わる学校です。

ちょっと東京の真ん中にあるとは思えない、ほのぼのした学校です。
本当は色々裏があるのかもしれませんが(?)、
生徒たちはいまどきびっくりするくらい素直でかわいらしい子が多いです
(そう言いつつもそう思えない時もたくさんありますけど…)。

良い意味でも悪い意味でも、子供っぽい生徒たちが多くいると感じます。
時に癒され、時に和まされ、時にいらだたされます(!)。

生徒たちは、英語への興味関心は高いものの、
なかなかテストや英検で成績を出すことが出来ない生徒や、
入試の本番に弱い生徒たちが多いです。
競争したり相手を蹴落としても目的を達成する…というようなことが
教えられない6ヵ年教育だからかな、と思います。

中高一貫校ですが、私は高等部に所属し、現在は高二の担任をしています。
英語に関しては、高2の上級クラス2つと、高3の中級クラス1つを担当しています。

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(大塚) 木下先生のクラスは、どんな雰囲気なんでしょう?    
(木下)

そうですね、担任の影響か、学年の中で
いちばんのんびりおっとりしたクラスだと言われています(笑)。
生徒たち、周囲の先生たち、保護者の方たちに支えられている毎日です。

最近のエピソードをご紹介すると、
この学年は取り組みが悪いわけではないのですが、
外部テストで点数を取れない生徒が多く、
今年の1月の模試の英語で、なんと過去最悪の数字を出してしまいました。

そんなわけで、現在改革に取り組んでいます。
やっと最近「平年並み」になってきとのことですが、
更に上を目指して、授業やカリキュラムについて工夫していきたいと思います。

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(大塚) 先生は、たしか部活動の顧問もされていましたよね?    
(木下)

はい。ギターマンドリン部の顧問をしており、
土曜日と夏休みは、ほとんど毎日部活です。
APETに行くのにも、もう一人の顧問と調整しながらスケジュールを空けてきています。
この夏のセミナーは、部活に顔を出してから来ました。

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(大塚) そうだったんですか!
先生は、2005年からAPETに参加されていますよね。
その頃、どんなお気持ちで参加されたんですか?
   
(木下) 当時、何を一番大事にして授業をしていいのか分からなくなって、
その場その場での「場当たりの授業」をすることに、限界を感じていました。

教師がそういう気持ちだと、当然、生徒にもそれが伝染するので、
もっと教師と生徒が楽しんでストレスなく授業ができたり
授業を受けたりするヒントがつかめたらと思って、参加しました。

当時から研修会に参加するのは好きで、
「英語教育の達人セミナー」など、研修会にはいろいろ参加していました。
     
ただ、研修ですばらしい先生方の授業実践を拝見して、
自分の授業で取り入れさせていただいても、
なんとなく表面的な真似だけにとどまってしまって思うようにいかなくて、
逆に落ち込んだり、ストレスがたまったりということもありましたね。

「うちの生徒もこの先生に教われば伸びるのになあ…かわいそうに」
と思ったり、英語力も海外経験も、また華もない私みたいな人(!)には
英語教師は無理なのかしら、と縮こまってしまって、
また授業がつらくなって…という悪循環でした。

当時を思い起こすと、大学以降、自分の英語力に
全く自信が持てないままに教師になってしまったので、
何年もの間、英語を教えるということに対して、
「自分なんかが…」と、すごく後ろ向きになっていたように感じます。

でもAPETに参加して、ネイティブでなくても、
自分が持っているものを発揮すればいい授業が出来るんだ、という
自信を与えられたように思います。

自分が持っているものの中には、プラスではないものもあります。
ただ、それをどうやってプラスに持っていったらいいのかを、
考えるようになりました。

これは、自分自身の中で大きな変化でしたね。

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(大塚) 具体的には、どういったことだったんですか?    
(木下)

そうですね・・・。
例えば、私は小さい頃からすごく早口で、
それは教師としてはずっとマイナスだと思っていて、悩んでいました。

でも、APETの模擬授業で他の先生方から
「それは先生の持ち味です」と言っていただけて、
精神的にすごく楽になりました。

きっと、私にはゆっくりと説明する授業よりも、
アクティビティを多くしたスピーディでテンポの良い授業のほうが
あっているのではないかと思って、その方向で授業を模索しています。

ICCの先生方のお話、そしてそのお話を産み出している視点に
いつも瞠目させられます。

なかでも今でも忘れられないのが、最初のAPETの一番最初の講義です。
たしか、大塚先生のお話だったと思うのですが、その時点から衝撃的でした。

「授業中は生徒は教師しか見るものがないから、
教師が気をつけていなければ生徒は飽きます」とのお言葉や、
目線、声の出し方、そして姿勢、笑顔についてのお話。

大塚先生がとてもきらきらして見えました(もちろん今も!)。
今でもよく姿勢が「だらん」となってしまいそうに疲れているときには、
授業前に、「竹の棒!」「竹の棒!」と、自分に言い聞かせています。

鹿野先生、岸先生の、学習者としての目線を忘れてはいないけれど、
プロフェッショナルとしての高い意識を持ちながら授業をされている姿にいつも感銘を受け、
力をもらっていると思います。

APETに行っているときには、
「早く学校に戻って授業がしたい!」という気持ちになるんです!

でも学校が始まってしばらくすると、へなへなになって、
またお休みになってAPETに行って元気になって…と、
例えるなら、APETは温泉か、女性にとってのエステみたいな感じがします。

(大塚) 温泉かエステ、ですか(笑)。
それって、お肌ツルツルってことでしょうか?(笑)
   
(木下) そうかもしれません(笑)。ストレスが軽減されますからね!

APETに行ったすぐ後の授業は、
生徒も「今日の授業はいつもと違う!」と分かるようです。

もちろんAPETで学んだことをそのままやって、
なのにうまくいかなくて、「なぜ?!」と思ったことも数知れずですが、
そういった失敗を含めた試行錯誤から、自分の授業が生まれてくるのだと思います。

そして全国の先生方の真摯なお姿を目の当たりに出来ること、
頑張っている様子をうかがえることも大きな楽しみです。
「私もへこたれてはいけない!」と、元気をもらっています。

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(大塚) APETで学んだことを、普段の授業でどのように生かしていますか?    
(木下) そうですね、ペアワークを授業の中心に据えていることが
一番大きいと思います。

授業では高1の4月の最初からペアワークを導入していますので、
今、2年の半ばとなり、生徒たちはすっかりペアワークに慣れています。
じゃんけんをさせただけでも「ペアワーク・モード」になってくれるので、進めやすいです。
    
生徒たちは素直だな、とこういうことからも感じています。
とてもありがたいです。
プリントも、ペアワークがしやすいような物を作成して活用しています。

もちろん、毎日全員が嬉々としてペアワークをやっているわけではないと思います。

とはいえ、私としてはペアワークをやらない生徒が
あまり居心地良くないクラスの雰囲気作りを心がけていますので(笑)、
なんとなく、全員がわいわいとやっているという感じに見えます、って
教師としてはかなりの問題発言でしょうか(笑)。

教師になったばかりのとき、
「集団の一割の生徒は、どんなに楽しいことをしても、ためになることをしてもついてこないが、
逆に、必ず一割はどんな時も教師の味方になってくれる生徒がいる。

その生徒たちが楽しそうに授業に参加する姿を見れば、
残り8割の日和見的な生徒もついてくるので、
とにかく教師についてくる生徒を大切にしなさい」と、言われたことがあります。

高校の入学直後から、私が担当するクラスでは
まるで高校の英語の授業ではこれが当たり前!であるかのように
ペアで活動をさせてきました。

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(大塚) 「英語の授業では当然ペアワークをするもの」といった文化を
入学当初から、意識して作られたんですね。
   
(木下) きっと私のクラスの生徒たちの多くは「ペアワークが楽しい」、
「ペアワークをしたほうが得だ」、
逆に、「(周りが楽しそうに活動しているのに)ペアワークをしていないと
なんとなく浮いてしまう」いう経験をこの一年半の間にしてきたのではないかと思います。

だから高校2年になった今でも、
抵抗なくペアワークをしてくれるのではないかと思います。
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(大塚) 「英語の授業では当然ペアで活動するもの」といった文化を
入学当初から、意識して作られたんですね。

   
(木下) 最近気づいたことがあるんですが、
ペアワークを通すと、ちょっと高めにハードルを設定しても、
思ったよりも、「すいっ」と生徒は乗り越えていけるんですね。
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(大塚) なるほど。グループ・ダイナミクスを活用されているんですね。
一人でやるよりも、複数名のほうが学習効果があがること、ありますよね。
きっと、学習環境作りがしっかりできているので、
生徒さんも活動に参加しやすいのだと思いますよ。
   
(木下) うーん、そうですね。
これまでは、生徒の潜在能力を過小評価していたのかなと思います。

それで、この8月のセミナーで学んだ英文の内容を
ペアで日本語と英語で要約する活動を、
教科書の各パートを利用して、行っています。

今月に入ってから毎回この活動を行っていますが、
「難しい難しい」と言いながらも、楽しそうにお互い助け合いながらやっています。
それなりの達成感があるようです。
    
それから、授業で音読を軸としていることも、APETの影響です。
「和訳がゴール」ではなく、その先にどこまで行けるか、という気持ちで
授業を組み立てています。

また、文法の指導の際にも、
「場面を具体的に設定する」「自分のこととして考える」ということをふまえて、
この文章はきっとこんな場面で使えるよ、と伝えることを意識しています。
 
無味乾燥に思える例文をただ訳すだけではなく、
想像力を働かせて具体的な場面を考えたりしています。

今月から私が担任をしている英語の苦手な生徒に
毎日音読筆写の課題を出しています。
その生徒は学年でも英語が苦手な方なので、
音読筆写でどれくらいその子に力がつくか、楽しみです。

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(大塚) 木下先生の今後の目標を、教えてください。    
(木下) 邪道かもしれませんが、私は授業を組み立てる時に
「教師と生徒が笑顔になれる瞬間をどれだけ多く作れるか」を
主軸として計画しています。

生徒と教師が両方とも自然に笑顔になれる授業のほうが、
たくさんインプットが入ったり、それがインテイクになったり、
緊張せずに、アウトプットできる環境になっているのではないかと思うからです。

もちろん、うまく行かないこともあります。
準備不足で授業をするのが辛いこともありますし、
生徒がどうしようもなくやる気がなかったり、寝ていたり、失礼な態度を取ったりと
腹立たしいこともあります。

でも、教師が楽しく授業を出来なければ、
生徒が楽しく授業が聞けるはずもないと思うのです。

とにかく、まず私が笑顔になれるような、楽しいと思えるような 
アクティビティや教材へのアプローチの仕方を考えています。

最近嬉しかったことは、クラスの個人面談で、
ある生徒に「どうして先生は授業中いつもそんなに楽しそうなんですか?」と
言われたことです。

もちろん英語に触れることが楽しい、という印象だけでなく、
基礎的な語彙や構文力、英語の発音になじんだ口という土台を  
高校時代のうちに作ってあげたいと思います。

個人的には、4月から始めた英語の多読をできるだけ続けていきたいと思います。
今年中に、250万語くらいまで読めたらいいなと思っています(今150万語くらいまで来ました)。

また父に、「英語の教師にくせに英検1級を持っていなくて
恥ずかしいと思わないのか?!」と言われたので、
密かに、闘志を燃やしているんです(笑)。
近いうちに、受験したいと思っています。TOEICも、受験していますし。

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(大塚) 最後に、全国の先生方へメッセージをお願いします!
   
(木下) 今年の夏のAPETで、
「Language Learning is a Lifelong Endeavor」という言葉を学びました。

生徒たちの一生を通じての学習の一時期に関わることができることは、
教師の(時にはハードな)特権だと思います。

今日失敗しても、また明日があります。

あきらめずに、生徒と共に新しい発見や楽しさにわくわくしながら、授業に臨んでいきましょう!

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(大塚) 木下先生、ありがとうございました。
   
       

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